雨

雨が降る
大地を濡らして
人々を濡らして
木々を濡らして
雨が降る
記憶に霞をかけて
形の曖昧な
涙を誘う
雨が降る
シトシトシトシト
しみわたり
雨が降る
私はただ
声も出せず
苦しい息の
叫びを上げる
雨が降る
掻き消され
何も伝わらない
おもいはただ
流されて消え
薄情にも
太陽が姿を見せ
いつまでも
心は濡れたまま
乾くことのないまま
取り残される
どんなに世界に
晴れ間が広がっても
雨が降ってる
誰か止めて
誰か誰か誰か
この雨を止めて
この雨を止めて

雨の土曜日、どうしたの元気ないね？と上席さんに言われた。
そんなつもりはなかった。
いつもみたいにしているつもりだった。
ほんの少し喘息が苦しかったのと偏頭痛のせいだろうと
笑顔をつくるがうまくつくれない。
変だ。
変だ。
どうしちゃったんだろう。
焦れば焦るほどうまく笑えない。
怖い。
怖い。
雨の日はいつもそう。

雨の日が好きだったはずなのに、ある時から雨が怖い。

思いだそうと思えば思い出せる記憶を引き出すのが怖い。
雨の日の記憶。
目をそらしてはだめなのにいつもそらしてきたツケだろうか。

怖い。怖い。怖い。助けて。

何度も夢で自分は雨の中叫んでいる。
でも実際には声にうまくなっていなくて掠れた奇声のような声が
宙に舞っては即座に雨に流されるだけでどこにも何も伝わらない。
ただ、頭の弱い子供が雨の中ずぶ濡れで泣いている、
そんな風にしか周囲にはとらえられてなかった。

あの感情をあの感覚をあのとき誰にどう伝えたらよかったのだろう。
誰にどう伝えたら自分はいまこんなに得体の知れない
(いいや本当はよく知っている)
恐怖に怯えずに済んだのだろうか。

自分はいつ、この水たまりから立ち上がれるのだろう。

自分と向き合って、誰か助けてと泣くのをやめて、目を開けて、
水面に映る私をみて、大好きだよって100万回唱えてみようか。

雨の日は、生について認めたい日です。
仲間に、私の生を認めて欲しく思うのです。
私がいてよかったよと言ってもらいたいのです。
そしたら立ち上がれる気がするのです。
ひとりじゃない気がするから。
病は気からというでしょ。
だからね。だから…